バブルがはじけた頃に定年退職をした著者は、人生の再構築を求めて2500坪の雑木林をまるごと購入し、10年かけて「あずまの森」に育て上げた。
 荒れ果てた林に道を切り開くところから始め、草刈りやゴミ拾いをし、畑や池を作り、作業小屋や休憩所を建ててロマンあふれる“男の秘密基地”を完成させたのである。

 その様子が、写真や図表をまじえて詳細に綴られていくのが本作品だ。
 自然はかけがえのないものを与えてくれるが、決していつも優しい面ばかりを見せるわけではない。

 大雨で森の地面はぬかるみ、雪で小屋は壊され、ヘビや蜂の襲来を受けることもある。それでも筆者や多くの友人・知人たちは自然に寄り添い、その懐に潜り込んでそこに生きる動植物に接しながら段々に森の人になっていく。

 これが「自然環境を自分の領域に内部化」ということなのであろう。
 雑木林を外から眺めるのではなく、その“当事者”として共生する。そこからはまた、自然に対する崇高な畏敬の念がおのずと生まれても来るわけである。

雑木林を手に入れたとき、著者は真っ先に「神の領域」を作ろうと思ったとのこと。
 時に人間を威嚇しながらも、限りない恵みを与えてくれる森は、まさに神のような存在に他なるまい。人は誰でも自分の中にそうした神がいる空間を探し求めているに違いない。

       B社 A,Yさんの感想文より








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